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谷口 純弘

アートの先にあるもの。

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担当者名谷口 純弘
住所大阪市西区京町堀1-13-21高木ビル1F奥
電話番号090-7354-4909
大阪メトロ最寄駅肥後橋駅 徒歩5分
最寄駅御堂筋線本町駅 徒歩10分/四つ橋線 徒歩7分
営業時間13:00〜19:00
定休日:不定休(展覧会期間中は月曜日もオープン)
比較的空いている時間帯15:00〜19:00

梅田や心斎橋といった都会の喧騒に疲れたら、本町駅で降りて京町堀周辺を散策してみるのはどうだろう。大阪の街並みに突如現れる靱公園は、家族連れからビジネスマンまであらゆる人が集い、優しく包容してくれる憩いの場。

人々が行き交うこの街で、大阪のアートシーンを牽引するのがコミュニティスペース『chignitta』さん。オーナーの谷口氏は、30年勤めていた会社を還暦直前で退職し、カルチャー発信や才能ある人物が集う交差点を担う場としてこの場を展開されたそう。

アップカミングなアーティストたちを、様々な角度でプロモートしてこられた谷口氏にお会いしてきました。

『chignitta』立ち上げ前のお話を伺いたいです。どんな思いがベースメントとなって設立に至ったのでしょうか?

「以前は大阪を代表する放送局の『FM802』で会社員として勤め、ラジオ制作サイドではなく、プロモーションの仕事に従事していました。

ラジオなので若手ミュージシャンを応援するのは当然ではあるんですが、16~34歳ぐらいの層をターゲットにしている番組ということもあり、『若者が夢を実現する』コンテンツは別に音楽に限らなくていいじゃないかということで、アートやデザイン、イラストレーションで活躍していきたい人をバックアップしていこうと始めたのがきっかけです。

『digmeout』というプロジェクトでは、オーディションをやってミュージシャンのポスターやCDジャケットに起用するなど様々なアプローチで若手アーティストの発掘を手がけたり、アメ村にギャラリーカフェを出店したり、『Unknown Asia』というアートフェアを主催してアジアのアーティストをコネクションしたり。会社員という形態とは思えないほど色々なことをさせてもらいながら、表現者の方をプロモートする活動に携わってきました。」

30年積み上げてこられたキャリアを手放して転身されるのは、かなり大胆なご決断だと感じます。コミュニケーションスペース設立の想いや背景を伺いたいです

「最初から最後まで一人でやって、絵だけで食べていくって中々大変なことだと思うんですよね。でも『自己実現を成し遂げたい』と考える人たちが集まって手を組めば、もっと面白いことがやれるんじゃないかなって。そういう人たちが集えるコミュティの場として、オンラインサロンを立ち上げたいなということになったんです。

でもそこで、僕がサラリーマンとして会社からお給料を貰ってたらあかんやん、楽してるよな、と思ったんです。同じ土俵に立つではないですけど、自分もインディとして何か成し遂げられることを証明すれば、『自分にも出来るかも?』と思ってもらえるかもしれない。

それに今の時代ならお金がなくても、本当に人の役に立つことで共感を得られれば、クラウドファンディングで資金を集めることができますし。

勢いもありましたが、ここを立ち上げる際に協力してくれていたパートナーの方から『会社辞めても死なへんで』と背中を押してもらって、確かにそうだよなと(笑)。当時58歳で定年まで待っても良かったけど、もっと自由にやってみたいという気持ちが優って、2021年にオープンしました。」

室内から見える靱公園の景観も抜群で、本当に素敵な空間です。谷口さんにとってこの場所はどうですか?

「ここは友人から借りているんですが、こんな素敵なロケーションって中々ない。この場所だからこそ何か面白いことがやれるんじゃないかなと確信したんです。

それに、この京町堀という街が本当に面白くて。メインエリアと顔が全く違ってオフィス街かと思いきや住宅地が連なっていたり、そうかと思えば緑が現れたり。個人経営の方が多い特殊な地域です。広告やデザイン、撮影スタジオや映像クリエイターなど個人で起業しているんだけど、全国区や世界を相手にやっている方が本当に多くて。そういう方たちとも徐々に仲良くなってきたんですが、この街は凄くポテンシャルがあるな。と一層感じました。

僕の得意分野であるアートとの化学反応によって、この京橋堀の中で新しい”何か”を生みだしたい、なんて考えたりもしています。」

壁一面には、谷口さんがこれまで集めてこられたレコードや書籍が。棚はその人の生きざまを映すと言いますが、ハイセンスな谷口書房にときめきます。

現在も展示をあらゆるアーティストのポップストアを開催していらっしゃいますが、どういったお客さんがこられていますか?

「お客さんの層は幅広いです。『アートギャラリー』と聞くと敷居が高く感じませんか?でもそんなことは無くて。公園も見えて、なんかやってそう、と気軽に来てくださる方も居て割と自由に入って来ていただいてます。

コロナが明けてからですが、私が注目している国内外のアーティストの個展を二週に一度のペースで行っています。とはいえ、お金をいただいて開く貸ギャラリーでは無いので、どうすれば売上に繋がるかをアーティストの方と一緒に企画をしています。でもそこは、プレゼンの仕方やコネクションなど30年間会社員としてやってきたので!(笑) ノウハウや知識というよりは、ずっと人との繋がりをもってきた、ということが大きいと思っています。やっぱり一人では何もできないので。どうすれば作品が売れるのか想像してキュレーションしていくことは大事。

ただ、利益は大切だけど楽しいことをやっているとその“楽しいバイブレーション”は循環すると信じていて。とはいえ30年間それだけでやってきたので、正直経営などはさっぱり分からなかった(笑)。」

ギャラリーに展示するアート作品を選定する基準などはあるのでしょうか?

「上手いかどうかではなく、『これを描いた人に会ってみたい』と思える人にお声がけしています。連絡だけで取り決めたりパッと決めたりするんではなくて、実際に会ってみてどんな方か知って、一年ぐらい時間をかけて準備しています。ポップで、かつオリジナリティ溢れる作品に惹かれますね。既に著名な人ばかりやっていても面白くないじゃないですか。これから来る才能を見つけて大きくしていくことにやりがいを感じていたので。自分たちがいいなと思って応援してきた人がどんどん著名になってプロとして駆け上がっていくのを近くで見ていると、やっぱり面白いんです。」

店内BGMもグルーヴィーな感じで本当におしゃれです。谷口さんのお好きな音楽のジャンルは?

「AOR(Adult Oriented Rock)というジャンルが好きですね。1970年代半ばに登場したジャンルなんですが、日本では『大人向けロック』という造語で親しまれているのかな。それ以前はQUEENなど派手なハードロックが主流だったんですが、白人ミュージックが黒人音楽のフィーリングで音楽を制作したらどうなるか?というマインドのスタイルが特徴なんです。中学生ぐらいで初めてラジオで聴いたとき、なんておしゃれなんだろうと。シティーボーイがドライブデートでかけるような、メロウで心地よいサウンドの虜になりました。」

25年前からアメ村でDJを始め、AORイベントを開催していたと語る谷口さん。週に一回、ジャズとワインに精通した方と縁があり水曜日には『水ジャズ』と称したジャズバーを開催しているそう。こんな街中で、毎週、大人たちが集ってスムーズなジャズを楽しめる夜があるなんて素敵。

強い思いのもとに実現した『chignitta』。2年間の営業を経てみて、実際の「現場」はどうですか?

「やっぱり良いですよね、現場は。お客さんと繋がれるここに出来るだけ居たいんです。

会社員時代は商業施設や百貨店でポップアップなどやっていたんですが、キャパが狭いからスタッフが居て僕も居て、となると邪魔になっちゃうんですよね。中々ざっくばらんに話せる感じでもなかったし。でも、作品についてもお客さん自身のことについても本当は色々と喋りたいんですよ。お客さんが作品を褒めてくださって、購入してくれたときなんてもうハグしたいぐらい。

僕に会いに来て下さる方もいらっしゃったので、ここではなるべく居るようにしています。

今働いてくれている子たちも、面接して採用したとかではなく、ここによく通ってくれていて話しているうちに『私も将来こんなことがやりたいんです』と夢を話してくれた子たちなんです。じゃあここでバイトしたら?と声をかけて働いてもらってます。」

街全体を巻き込んでの谷口さんの活動は、これから産声をあげる若きアーティストにスポットを当てるだけではなく、きっとこの街への還元でもある。軽やかに楽しげに未来を拓いていく姿に、国境も年代をも超えて多くの人が魅せられているんだろう。こんなかっこいい大人、もっと早く出会いたかったな。

これから実現していきたいことはありますか?

「できるだけ長く、この場所で続けたいしもっと自分の思いつくいろんなことをやっていきたいです。

先日絵画教室も行いましたが、アート方面に精通している人だけではなく、ファミリー層やビギナーの方にも広く気軽に訪れていただけるのが良いなと感じましたね。朝市やマルシェ、アートフェアまでなんでもやりますね。

今年の11/3.4.5には、周辺の企業やギャラリーにも参画してもらって、『メタセコイア・キョウマチボリ・アートフェア2023』というのを開催します。前回は400人ほどの応募者の中から激選し、30名のアーティストの作品を展示しました。靱公園にあるメタセコイアの大木のように、ぐんぐん伸びる新進気鋭のクリエイターを発掘しようぜ!というコンセプトなんです。いろんな方に足を運んで頂ければなと思います。」

一人の力ではなく、みんなの力で。同じ熱量を持つ仲間と相乗効果で大きなシナジーが生まれると思うとなんだかワクワクする。これまで数々のレガシーを残してきた谷口さんのセカンドステージは、まだまだこれからだ。