担当者名 | 神木慧仁 |
住所 | 大阪府大阪市港区海岸通り1-5―28天満屋ビル2階 |
電話番号 | 06-6575-0880 |
大阪メトロ最寄駅 | 大阪港駅 徒歩4分 |
最寄駅 | 大阪港駅 |
営業時間 | 平日 11:00~15:00 土・日・祝 11:00~16:00 定休日:火・水 |
比較的空いている時間帯 | – |
大阪港駅を降りると見えるどこか落ち着いた街並みの中に佇むひときわ雰囲気のあるレトロなビル。その「天満屋ビル」の中にある洋食カフェ『ハaハaハa a HayashiRice&Jewelry』さんは、カフェとして利用できるスペースとジュエリー工房のスペースがあり、ご夫婦で切り盛りされています。定番のオムハヤシライスをはじめとした心温まるメニューたちは、女性を中心に親しまれてきました。そんな『ハaハaハa HayashiRice&Jewelry』さんにお話を聞かせていただきました。
このビルでお店をはじめた経緯を教えてください。
「もともとこのビルは、船関連の会社が1階のテナントとして入っていたのみで2・3階は使われていませんでした。
妻が前の職場で勤めていた当時、通勤途中の車窓から見えるこの建物に惹かれて『ここでお店をしたいな』と直感的に思ったのがきっかけで。その職場で勤続10年を迎えるタイミングでもあり、何か自分でやってみたいと思い立ち2002年に当時の同僚と2人で『お茶と雑貨の店ハaハaハa』をこちらにオープンしました。それが今のハaハaハaの前身です。
その後月日が流れ私と結婚することになるのですが、独身時代私は弁天町でジュエリー工房をしていたので、結婚に際して空いていたフロアに工房兼住居を設けて、それぞれの分野で一緒に頑張っていこうということでやっていました。
そうする中、妻の同僚の継続が難しくなるなどの事情が重なり、営業を夫婦2人でリスタートすることになりました。」
お店を構成するエレメントたちがとても素敵です。インテリアは奥様のチョイスでしょうか?
「妻の好み中心にセレクトされたものです。大体が大阪港にゆかりがあるんです。以前は自分たちで器も焼いていたのですが、沢山お客さまに来ていただくと1日で100枚ほど出るので、制作するのにも限界があり購入するようにしました。ただ、その分温もりが感じられ、手に取ってときめくようなものをというこだわりをもって選んでいます。現在はこばやしゆうさんという陶芸家の方の食器などを使用しています。」
話題を呼んでいる『空飛ぶドライブするぅUー』の発案や、築港を飛び出してキッチンカーを始められたきっかけはなんだったのでしょうか?
「コロナでお店に来てもらえる機会が減り、なんとか策を打たなければということで、まず『空飛ぶドライブするぅUー』を始めました。
キッチンブース(火口)が窓の側にあるんですが、窓を開けてフライパンをそこで振っていたりすると下にいるお客さまから『ここはお店ですか?』などと声をかけられるんですね。下の路面にいる人と会話をする体験が何度かあったことで、これを活かして2階からカゴを降せば商品の受け渡しができるんじゃないかな?と考えたんです。
スタッフたちと話す中で『やってみようか?』と突発的に思いついたことだったんですが、非接触もクリアしつつ安心して楽しんでいただけていたので、自信を持ってこのスタイルでいこう、と決断できました。
コロナの取り組み第二弾として、外にでて販売できたら密にもならないだろうということでキッチンカーも取り入れてみました。コロナという不測の事態での策でしたが、結果として様々な提供スタイルでお届けできるようになったことは、大きなアドバンテージになったのかなと感じています。」
20年という長い歴史の中で、何度も創意工夫を施し今の形に至ったそうですが、そのプロセスや苦労されたことがあれば伺いたいです。
「妻たちがお茶と雑貨をメインとしていた20年程前は、正直それだけだとどうしても訪れる人に限りがありました。SNSなども今ほど広がりは無く、今でこそ近代のレトロ建築はコンテンツとして注目されていますが、当時はあまり話題性が無く経営スタイルなども模索していました。それに加え営業時間も朝7時から夕方18時までと長く、身体的にも大変な面が多かったです。
また、他のエリアと全く条件が異なり、南・西・北と三方を水辺に囲まれているので、東側本町方面から以外は人を取り込み難い地理的なデメリットもありました。このままでは厳しいなと痛感していた頃、女性2人だけで切り盛りしていたこともあって、当時の常連さんや近隣の会社の会長さんたちがこんなこともやってみたらどうだ、など目をかけてくださっていたんです。
店名の『ハaハaハa』は笑い声だったり『母』という音の響きが安心感を与えたり、『かわいい』という意味の古語の『かほはゆし』の音韻に似ていたり、色んな要素を込めて『ハaハaハa』と名付けました。そして、近隣の方に、「フードも取り入れたら?」とアドバイスをいただき、店名になぞらえて考案し、『ハハハヤシライス』が誕生しました。」
名物の『オムハハハヤシ』はあつあつとろとろでとっても食欲をそそります。フードの考案はどのようにされているのでしょうか?
「港町に佇むレトロな装いの建築、そしてウッディな内装にもマッチするフードって何だろうと考えたときに、ハヤシライスの雰囲気がベストだと感じたんです。メジャーで人気者なカレーが『太陽』のような存在なのに対して、ハヤシライスというのは『日陰』というか、いつも二番手な存在だと思うんですけど、その慎ましさに魅力があるなと。控えめだけど確かな味や深みがあるという要素が、この建物の雰囲気にもぴったりだということでハヤシライスを採用しました。
実は、時代やトレンドに応じて屋号やメニューを変えているんです。元々はハヤシライスを提供していたんですが、アップデートを重ね2013年に今の看板メニューである『オムハハハヤシ』が誕生しましたふわふわのたまごが合わさることによってハヤシライスのソースがより一層引き立ち、まろやかでほっとする味わいになるんです。
以前は焼き菓子のラインナップも多く揃えていたのですが、フード提供が忙しくなった今は、ハヤシライスとケーキが看板メニューです。
僕がフード担当で、妻が焼き菓子を制作しており、常に4種類ほどのケーキを提供できるようにはしています。私たちはスイーツ専門店ではないので繊細さの追求というよりは、手作り感があって素朴な味わいのケーキをウリにしています。4種類の中からどれにしようかなと、ワクワクしながら選んでいただける点がこだわりです。」
一面に広がる大きな窓からは緑が覗き、たっぷりと取り込まれる柔らかな太陽の光が穏やかで心地の良い空間を演出してくれます。
ウッド調の家具は優しい色使いの雑貨たちとマッチし、統一感のある雰囲気を楽しむことができます。
港区や天保山への思い入れが溢れていらっしゃるのが、お話からひしひしと伝わってきます。
「確かに、港区への愛はありすぎるかもしれないです(笑)。もちろん自分がここで住み働いている故の愛着はあるとは思うのですが、それを抜きにしても唯一無二の素晴らしい場所だなと感じます。
空港へのアクセスも良く、堺東駅までのバスも出ていますし、大阪メトロ本町駅からも一本で来られます。他のエリアと決定的に違うのは、空が広く感じられるという点です。海に向かって空が拓けているのも開放感が感じられます。
当初は自分が好きなことを始めたわけでもなく、この建物にも思い入れがあったわけでは無いのですが、妻をきっかけにこの土地に縁を持ち、営業に携わるうちに当然愛着が湧いてくるようになったんですね。
このビルのオーナーさんはご高齢で遠方に住んでいらっしゃり、中々管理が難しいので、私たちが代わりにメンテナンスの面などサポートしています。」
『aeru手帖』を持って訪れる人たちへひとこと
「昭和10年から続く歴史ある天満ビル。隣の商船三井築港ビルと並んで戦争を経てもなおそのままの形で残り続けているというのは大阪府内でも貴重な光景です。その中に入って営業させてもらえているのは幸運なことだと感じます。
妻はグラフィック系の仕事を、私はジュエリー職人で二人とも調理は未経験なので、今日まで努力し続けてきましたが、まだまだ『料理人』や『ケーキ職人』といった肩書きで名乗るにはいたりません。それでも一生懸命作ってきたものを『美味しい』と言っていただけるのは、この建物が織りなす雰囲気も相まってだと思っています。食べ物と一緒に空間も楽しんでもらいながらお過ごしいただきたいですね。」
細かなディティールに至るまで女性のきゅんとくる創意工夫が散りばめられており、クリエイター出身のお二人のセンスが光ります。
古き良き時代の歴史の面影を残す天満屋ビルは、この港町で移りゆく時代の流れとともに多くの人とモノが出会い循環していく場として愛されてきました。そんな情緒あふれる建築の中で、ほっと心ほどけるひとときを過ごされてみてはいかがでしょうか。