担当者名 | 野崎健太郎 |
住所 | 大阪市中央区道修町1-1-6 |
電話番号 | 無 |
大阪メトロ最寄駅 | 北浜駅 徒歩3分 |
最寄駅 | – |
営業時間 | 7:00〜10:00/11:30〜16:00/18:00〜22:00(不定期) |
比較的空いている時間帯 |
今、北浜駅周辺がアツいらしい。トレンドに敏感なシティボーイ&ガールさんが足繁く通う注目のお店がどんどん出現し、スタイリッシュなオフィス街は新たな姿へとトランスフォーム中のようだ。そんな飲食店激戦区の北浜で、ビリヤニやチャイ、サモサなど「本場すぎる」インド料理を提供しているのが『Mr.samosa』さん。
イベントなどに出展する度に「カルチャー系カレー」と称され密かにファンを拡大させてきた唯一無二の味。
そんな枠に囚われないスパイス料理を振る舞う店主の野崎さんを構成するルーツは、どこからやってきているのだろう。
独立前は本町のギャラリーカフェで間借りカレーをされていたとのことですが、Mr.samosaが誕生するまでの経緯を教えてください。
「北浜に移る直前は本街のビルを3人でシェアしていて、僕は夜だけ間借りでカレー屋をやっていました。独立したのはその2年ぐらいでしたね。
間借りカレーをやる前に、アメ村の『カンテ・グランテ』や『Buttah(ボタ)』でカレーやチャイを学んだのですが、そこで働いてたスタッフが劇団員やバンドマン、スピリチュアルに精通している方など、みんな物凄く自由だったんです。20代前半に特殊な人たちのコミュニティに入れたというのがターニングポイントでした。
元々はケーキ職人になりたくて、製菓の専門学校を卒業しケーキ屋に就職したんですが、僕には違ったなと感じて。面白いけど、会社員として社会の流れに乗っている感覚がどうも性に合わなかったんです。そんなとき、友人がその界隈のフットサルチームに呼んでくれたことでコミュニティが広がっていったんです。
大阪に出てきて一番最初のフリーター生活のスタートがたまたまカンテだったんですが、こんなスタイルでの頑張り方もあるのか、と枠に囚われず気楽で、肌に合っていました。
刺激という訳ではないけど、カンテやButtahのように、クセが強くアーティスティックな人たちと同じ時間を過ごしたことで、自分の感覚もそっち方面に寄っていったのかなあと感じます。」
カンテやButtahでの経験がベースになっているのですね。お店を始めてからのエピソードも伺いたいです。
「カレー屋なんですがモーニングをやっていて。お昼時はサラリーマンの方が『こんな感じかあ』ぐらいで食べに来てくれるんですが、朝の時間帯に来られる方は見るからにオーラやパワーも別格で、身の上話もエネルギッシュなので、そんな方たちと会話するのが面白いですね。
以前、見るからに重々しくどんよりとしたオーラを放ったお客さんが来られたので話を聞いていたんです。そうしたら『仕事に行きたくないんです…』と返ってきて。僕からしたらしんどいなら休まないと、きちんと理由があるし休むものだろうと思うんですが、『そういう訳にはいかない』と。ああこれが、いわゆる“社会のストレス”なのかなあって。休むっていう理由そこで初めて、『あれ、自分の今までの生き方とか“フツウ”ってなんやったんかな?』と考えたんです。
そんな中でこの『aeru Osaka』の話をいただいて、生きづらさを抱えてたり“フツウ”とは何かで悩んでる方たちに、『自分みたいな奴もおるから、会いに来てもらえたらな』と思ったんです。
雑誌やテレビで店を紹介してもらうとなると、いろんな事情があったりメディアとの間に齟齬があったりと、枠にはめられてしまう感じがあって。
だからメディア露出云々よりも、生身で会ってもらえる方が本来の自分を知ってもらえると思えるし、こういう生き方もある、みたいなのが行き渡ればなと思うので、『aeru Osaka』の企画を聞いたとき、凄く良いなと感じました。」
お話を伺って、「型にはまらない生き方」がよりご自身らしいスタイルだと感じられているのかな?と感じたのですが。
「はまろうと思えばはまれるし、仕事もそれなりにこなせたんですが出世して稼いで贅沢して、といった一般的な人が理想とするような“ゴール”が、僕にはなくて。それよりかは、時間さえ許すなら音楽や本に触れていたい。会社員という働き方では自分のにとっての“楽しみ”が見いだせなかったので、この道が正しいのかどうかも、この先どうなるかも分からないけど自分の思うようにお店をやって、その人たちと同じくらいかそれ以上に頑張りたいなと思うんです。
今の世の中の在り方って、割と守られているようだけど理不尽なことが横行している。それを“社会の常識”として暗黙の了解で呑み込んでたりしてる。何かを削ってまともな生活を得るってどうなのかなって僕は思うんです。
僕の生き方は自分の感覚は間違っていないと思っていたい。今は、来てくださるお客さんも結構僕と類友的な感覚を持ってはるなと感じますし、このスタイルがやっぱりしっくりきてるのかなあと。」
現地の風味をそのままインポートしている「現地系カレー」と称されるMr.samosaさんのカレー。実は以前、個人的に日替わりプレートを食べに来たんですが、その再現性と本気度に衝撃を受けました。メニューについても伺いたいです。
「昔はちょっと攻めたカレーがあったら『そんなんカレーじゃないよ』みたいな世論があったんですが、最近のカレーって、物凄く自由度が高まってますよね。今の“スパイスカレー”はついて行かれへんな…と感じたので、現地のインドカレーのレシピ料理やムンバイの食べ歩き動画を見て試作してみたり。あまりにもインドすぎてこれはあかんか、となるときもあったので、改良して建前上は日本人向けの味に仕上げました(笑)。」
お店を営む上で、料理を提供する上で野崎さんが大切にしているモットーやスタンスなどはありますか?
「お店である以上、中立の立場でいたいとは考えています。何においても、合うものは合うし合わないものは合わないので、押し付けないようにしたいなと。
あと、本場のインド料理を再現しようとしていますが、安全面は保証できるし安心して食べていただきたいです。というのも、ここはオフィス街のど真ん中に位置していて、サラリーマンの方々は大抵コンビニ飯で済まされるんですね。でもたまには、スパイスで一回身体をリセットして欲しいなと思うんです。
スパイスについては諸説あるけど、毎日食べていて実際なんか調子が良い。コンビニと比べるとランチ単価は高いですが、スパイスの効能や栄養など、結果的に身体にもたらされるメリットを考えると払うだけの価値があるのかなと。コンビニの栄養ドリンクで手軽に済ませるんじゃなくて、生のカレーで摂取してもらえたら良いなというのはありますね。特にコロナを経て、やっぱり身体に入れるものはちゃんとして整えないとなって思うようになり、なるべく店で出すものは素材もナチュラルなものに変え、こだわるようにしました。」
安さや手軽さを追求するあまり、食や生活の質が落ちてしまう現代社会に警鐘を鳴らす野崎さん。この考え方はカンテ・グランテ時代のメンバーからの影響が大きいそう。コロナ以降は倫理観や思想の違いが浮き彫りになり、混沌とした世の中で、私たちは何を選択し、どう生きるのか。家族や友人でも躊躇してしまうかもしれないようなセンシティブな分野まで、ジャンルレスに自分の思いや社会に対する向き合い方を深ぼって語り合える店主は中々いない。
私たちは、周囲からの同調圧力や「これが最善だろう」といった“当たり前”に縛られるがあまり、自分や世の中の価値観と向き合ったり思考したりする機会が格段に減っていると感じます。野崎さんはカンテやButtahのメンバーの中でご自身の見解を構築してこられたのかなと思うのですが、これからの時代はどう渡り歩いて行くべきと感じられますか?
「幸せとは何か、とか結局根本を辿れば、みんな一緒かなと思うんです。普段皆が感じていることが違いすぎていて面白いなと感じるので、いろんな人のプロセスを聴いて考えたりしようと思っていて。自分の置かれている環境や周りの意見がどうかによって、自分の選択って正直変わってくると思うんですよ。世の中の『当たり前』を一歩引いて問題ししてみることも必要なのかなと。
持論なんですが、『非常識』と呼ばれている人たちは、実は常識的なことが出来るんですよ。でも常識的なことが出来る人たちが飽和しすぎていて、平均値になってしまう。非常識なことができる人たちは『革命家』だと思っているんですが、その人たちが動いてくれたことで世の中が変わってきて、それを受け継ぐ僕ら世代も自由に行動選択が出来ている訳で。コロナで周りとの価値観の違いが露呈して、何がアベレージなのかが曖昧になった今の時代。きっとこの先、もっと『当たり前』は崩れて社会全体の感覚も変わってくると思います。
今はみんな何かと、過剰に気にしすぎな風潮があるように感じます。どちらが正しいとかはないですが、自分が得た情報は鵜呑みにせずきちんと吟味はしているので、自分たちの考え方は間違ってはないんじゃないかなと思いたいというか。全体の価値観が全く一緒になるとは思っていないけど、もう少しグラデーションして寄っていったら良いな、と。みんな固定観念に囚われず、“気付く”だけで、ハートウォーミングな世界になると思うんです。」
『aeru手帖』を持って訪れる方にひとこと
「どう話が広がっていくのか、来てからのお楽しみですね!(笑)表向きは『A面』感を醸し出してますけど、実際ゴリゴリに『B面』だと思うんで(笑)。来てもらって色々と語り尽くしたいですね。」
正統派・北浜の「B面」。一見すると王道感あるスパイスカレー屋、その中に潜むアングラ感。なんとなくオーダーして、サッと帰ってしまうなんて勿体ない。一度行けば間違いなくクセになる、ディープな味わいと店主をぜひ堪能してほしい。