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こころや呉服店

Who

名倉 克典

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担当者名名倉克典
住所大阪市住之江区粉浜2-12-26
電話番号06-6672-3905
大阪メトロ最寄駅玉出駅 徒歩9分
最寄駅南海本線粉浜駅 徒歩2分
営業時間10:30〜18:30 
定休日:水・木
比較的空いている時間帯店主出張など予定はIGをチェック

玉出駅から少し歩くと姿を見せる粉浜商店街。懐かしい雰囲気が色濃く残るこの通りに、モダンな店構えの『こころや呉服店』さんはあります。変わりゆく時代や街並みの中で、変わらぬ良さを守りながら、新しい方法を模索し続けて来られたそう。並べられた品物はどれも、名倉さんが惚れ込み、吟味された逸品。ミニマルな様相ながら、熱い情熱を秘めた名倉さん。これまでの22年を振り返り語ってくださる中、何を大切にし、いかにこの仕事に向き合って来られたのか、その生き様や流儀が見えてきました。

呉服屋さんの前身は、醤油醸造屋さんだったのだとか。

「江戸時代の末から明治にかけて奈良で醤油屋を営んでおりましたが、初代が大阪に出てきたかったようで、当時需要の多かった呉服屋に転身したようです。今や着物の位置付けは、ファッションの一ジャンルとなってしまっていますが、当時の呉服店は衣食住の「衣」全般を受け持っていましたから、日々忙しかったようです

呉服店の方向性はそれぞれのお店によって様々です。ECサイトで大量販売する所もあれば、高級な染め物しか扱わない所もあり、随分業界は小さくなりましたが、今もかろうじて多様性は残っていますね。」

いつお店を継ぐ決心をされたのでしょうか?

「私の子供の頃には、スーパーもあまりなく商店街にお客さまが溢れていました。両親やお店の人ととお客さまの楽しそうなやりとりを見る中で、幼いながらに『絶対継ぐんだ』と決めておりました。そのために美大に進み、染織を学んでいたのですが、業界はどんどん衰退してしまうからと親に反対されたこともあり、卒業後はインテリアデザイナーとしてデザイン事務所に勤めていました。しかし、様々なタイミングが重なったことで、やはり継ごうと決めました。」

「呉服店」と聞くと、どうしても敷居が高そう…という印象を抱いてしまいます。

「多くの方がそう思われてるでしょう。うちはカジュアルなものをメインに扱ってはいるけど、物凄く敷居が低い訳ではなくて。ただどの界隈でもそうですが、『呉服屋は入りにくくて駄目だ』と揶揄する方の声が大きいために、敬遠されてしまうというのは正直あります。すると、『その業界全体がそうなんだ』という悪い印象を持たれてしまうんですね。それを払拭しようと、浴衣のセールを行うなど敷居を下げなきゃとか考えた時期もありましたけど、良いものをひたすら誠実に、発信し続けていくことに尽きるんじゃないかという結論に至りました。」

インスタグラムを拝見しました。一つひとつ、ていねいに説明されていて、名倉さんのお人柄や、品物の素晴らしさが細部まで伝わってきます。

「ごはん屋さんが、良質な素材を仕入れて、美味しい料理に仕上げて提供することと全く同じで、良い品物を揃え、その価値を求めている方に発信していくのが僕の役目です。

自分が綺麗だと感じるものを、お客さまにも綺麗だと感じていただけるような気持ちのハリは必要だと思います。美しいものがお好きな方々に『あれ、質が落ちたな。』と思われてしまわないように、お客さまに喜んでもらうには、歳を重ねても毎日見る目を養い続けなければならないし、商品と真摯に向き合う必要があると思っています。」

誠実に、ていねいに目の前のことをこなしていくことが、一番の近道なのですね

「まだまだ足りませんが、ひたすら自分が良いと思うものを追い求めて、妥協せず少しずつでも積み重ねていけば、見てくれる人はいると思っています。

和装の染織物は手作業のものが多いんです、また、作家物は作り手さんの手間と思いがこもっているものですから相応の値がつくのは当然だと思うのです。そんな背景を考えたら、うちも適当なことはしたらあかんなって。

見えている世界は全部自分の鏡だと思っています。お店やお客さまの雰囲気を創り上げているのは、他の誰でもない自分自身なので、怖いなぁと思います。」

お客さま欲しさに、本来価値あるものを安売りする、あるいは逆に過度に高値をつけるなど「やりたくないことはやらない」と語る名倉さん。  さりげなく素敵で、背伸びをしなくても洗練されている。そんな品物を扱う店主さんも、謙虚で実直。 

品物を選定するとき、何か直観的にビビッとくるものがあるのでしょうか?

「感覚的に、『あ、いいな』と思うものはありますね。そうして作家さんや職人さんにお会いして、人となりを知っていくとシンパシーを感じる時が多いです。ビジネスライクな感じより人同士のお付き合いを大切にしています。

美大出身なこともあり、そこで培ってきた審美眼のようなもので作品を見ています。プロとして、作品を見て触れて、色々と伝わってくるものを感じるようにしています。また良いもの好きなものは強く伝わって来る気がします、結局、芸術は人となりなのかなとも思う時もあります。

邪念が入ると見透かされてしまうので、感性を研ぎ澄まして『これいいな』という自分の感覚を大切にしていきたいなと。」

「呉服」という伝統を繋げていく上で、行っていることや苦労はありますか?

「作家さんの新作を色んな方に見ていただく『音色展』という展示会を行っています。そうですね…地味だけど丁寧に下ごしらえがされていて、しみじみと滋味あふれるお料理を提供してくれる職人気質の板前さんのような、そんな感じが私は好きなんですが、そんな作家さんが集まって発信すれば、思いもよらない音色や、個々よりも大きなシナジーが生まれるんじゃないのかなと思います。

これまで10年大阪や東京で行ってきて、おかげさまで応援して下さるお客様もいらして、随分ありがたいことですけど、どこか守りに入ってる気がしたので、初心に帰る気持ちで今年から福岡と名古屋で開催したんです。新鮮な気持ちを持ててとても良かったです。

好きなことを仕事しているからこそ、妥協はできません。ここに来るまで色々あった訳ですが、失敗しても成功しても全部自分に還ってきますから。」

『aeru Osaka手帖』を持って訪れる方にひとこと

「ワクワクしてもらえるような作品を提供していきたいんです。着物は“魔物”。惹きつけられる何かがありますし、実際美しく引き立ててくれます。

ご提案させていただいて、喜んでくださるとやってて良かったと嬉しくなりますし、それで商売をさせてもらえるってありがたいと思います。」

メンテナンスはもちろん、トータルコーディネートもしています、着こなしやノウハウなど、ネットに溢れる情報に翻弄されてしまうよりは、うちに来ていただく方が近道をお教えできるかなと思っております。

まずはふらっと立ち寄ってみてください。手に取って感じていただければ幸いです。」

正直であること。たゆまぬ努力を積み上げていくこと。在りたい姿であるために筋を通し、「プロ」としての所業を全うする。

”いい仕事”って、理想の生き方ってなんだろう。呉服の作法だけでなく、大切なことに立ち返るきっかけをくれる名倉さんに会いに、奥深い呉服の世界の門を開いてみてください。